コーチングとカウンセリングの5つの違い|学ぶならどっちがおすすめ?
どちらも対人援助のための手法である、コーチングとカウンセリング。
相手の話を聴くことが主で、使用するスキルも似ていることから、
- 「コーチとカウンセラーは具体的に何が違うの?」
- 「それぞれのメリットとデメリットは?」
- 「これから学ぶなら、コーチングかカウンセリングどちらがおすすめ?」
と、疑問に思う方も多いようです。
今回は、600人以上にコーチやカウンセラーの独立支援をしている私(田中直子)が、コーチングとカウンセリングの違いについてわかりやすく解説すると共に「ティーチング」や「セラピー」など、混同されやすい言葉との違いについてもご紹介します。
これからコーチングやカウンセリングを学ぶことを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
目次
コーチングとカウンセリングの明確な違いとは
コーチングとカウンセリングには、大きく分けて以下の5つの違いがあります。
それぞれ、どのように違うのか解説していきますね。
<5つの違い>
コーチングとカウンセリングは目的が違う
コーチングもカウンセリングも、「本人ひとりでは難しい課題を乗り越え、より良い状態になるためのサポート」という点では同じです。
しかし、一言でいうならば、コーチングは「自己実現や目標達成」、カウンセリングは「生き辛さの解消」を目的として行うものです。
言い換えると、コーチングは「より優れた状態を目指す」ものであり、カウンセリングは、「心身の不調をケアし、健やかさを取り戻す」ものなのです。
コーチングは精神疾患のある人には向かない
目的が違うということは、当然ですが対象者も変わってきます。
コーチングは、より高いレベルを目指してチャレンジすることが前提なので、目標達成するまでには失敗がつきものです。
「失敗も成長のプロセス」と捉え、コーチのサポートを受けながら主体的に行動していける人が対象になります。
このため、うつ病や依存症などの精神疾患がある人には難しい面があるでしょう。
一方、カウンセリングは「治療の一貫」として行われることもあり、もともと心理的な問題を抱えている人が対象であるため、精神疾患がある方にも向いています。
コーチングは未来、カウンセリングは過去に焦点を当てる
コーチングは自己実現や目標達成が目的ですので、自分がどのようにありたいのか、どんな目標を達成したいのかを明確にしなければなりません。そのため、「未来」に焦点を当て、理想を実現するためには何をすべきなのかを逆算して考えます。
一方、カウンセリングは「生き辛さの解消」が目的であるため、まずは、心の傷や悩みの根本原因となっている経験を振り返る必要があります。
つまり、カウンセリングはコーチングとは逆に「過去」に焦点を当て、個々に合ったケアを行うことで現在起きている問題を解決していくのです。
コーチングとカウンセリングの料金の違い
有料カウンセリングの相場は、1回(45~60分)あたり5,000円~15,000円程度です。
もちろん、一回3万円以上するようなカウンセリングも存在しますが、行政サービスを利用すれば無料で受けられることや、対象者が心身の不調で働けないなど、経済的に困っている人も多いことから、高額にしづらい面があるのです。
コーチングも、カウンセリングの相場と同じような料金(1回あたり5,000円~15,000円)で提供している人はたくさんいますが、カウンセリングとは異なり行政サービスはなく、対象者の幅も非常に広いため、料金はまちまちで比較的高めです。
(経営者が対象の場合、一回数十万円するようなものもあります。)
カウンセラーとコーチは資格に違いがある
コーチング資格は、国際資格のような信頼性の高いものも含め、全て民間資格です。一方、心理カウンセラーに関する資格は、2017年に新設された「公認心理士」という国家資格が存在します。
また、「臨床心理士」などカウンセラーの資格として認知度の高い民間資格も、大学や大学院での必要科目の履修や実務経験などが必要で、資格取得に長期間の学習が必要です。
以下は、コーチ、カウンセラーの主な資格です。
<コーチ>※全て民間資格
●国際資格
ICF、CPCC、AC、EMCCなど
●一般資格
生涯学習開発財団認定コーチ、NLPプロコーチGCS、GCS認定プロフェッショナルコーチなど
<カウンセラー>
●国家資格 公認心理士
●民間資格 臨床心理士、臨床発達心理士、学校心理士、産業カウンセラーなど
このほか、講座を受ければ簡単に取得できるような民間資格も多数存在します。そのような資格は、社会的な信用はあまり期待できませんが、「一定レベルの専門知識を手軽に学びたい」という人にはよいかもしれません。
資格はコーチやカウンセラーにとって必ずしも必要ではないため、取得するかどうかは学ぶ目的に応じて考えるとよいでしょう。
コーチングとカウンセリングの共通点
コーチングとカウンセリングには様々な違いがありますが、共通の部分もあります。
ここでは、3つの共通点をご紹介します。
対話により望ましい状態へと導く
コーチもカウンセラーも、「傾聴」「承認」「質問」の3つの基本スキルを使い、対話を通して相手をより良い方向へ導きます。
「聴くのが8割」と言われるほど相手の話に耳を傾ける時間が長いため、聴くことが苦にならない人に向いている仕事と言えるでしょう。
相手以上に相手の可能性を信じる
対人援助の要は信頼関係です。
コーチもカウンセラーも、相手がどのような状態のときも100%相手の可能性を信じ「あなたの味方であり一番の応援者ですよ」というスタンスを貫くことで信頼関係を深めます。
継続することで人生が変わる
たった一度のコーチングやカウンセリングでも、やる気アップや不安の軽減などに効果はありますが、長続きはしないものです。
継続することで相手の思考パターンや行動の変容が起こり、人生がより良い方向へと変わっていくという点は、コーチングとカウンセリングの共通点です。
コーチングとカウンセリングのメリット・デメリット
「それぞれの違いや共通点についてはわかったけれど、自分にはどちらが合っているんだろう?」と感じる人もいるかもしれませんね。
より理解を深めて頂くために、コーチングとカウンセリングのメリットとデメリットについてもご紹介します。
コーチングのメリット・デメリット
以下は、コーチングを受ける人と学ぶ人に分けて、メリットとデメリットをまとめたものです。
受ける人 | 学ぶ人 | |
メリット | ・進みたい方向性や目標が明確になる
・潜在的な可能性が引き出される ・主体性が育ち問題解決能力が高まる ・一人では困難な壁を乗り越えられる ・より早く目標を達成できる ・気づきを得られ、視野が広がる |
・人の成長の役に立てる
・仕事や育児などに活かせる ・自分の目標達成に活かせる ・視野が広がる ・副業や起業することができる |
デメリット | ・やる気がない人や依存的な人は受けても効果がない
・すぐには効果が得られない ・アドバイスはもらえない ・コーチの能力差が大きい |
・学びにたくさんの時間とお金がかかる
・スキルを身に付けても収入に繋がるとは限らない |
カウンセリングのメリット・デメリット
カウンセリングを受ける人と学ぶ人の、それぞれのメリットとデメリットについては以下の通りです。
受ける人 | 学ぶ人 | |
メリット | ・本音を吐き出すことでスッキリする
・自分の思考のクセがわかる ・自分の長所に気付ける ・ものごとの捉え方が変わる ・自己肯定感が高まる ・受容され安心感が得られる |
・深い悩みを持つ人の役に立てる
・自己肯定感が高まる ・仕事や育児などに活かせる ・副業や起業することができる ・公認心理士などの資格を取得すれば |
デメリット | ・トラウマや悩みに直面しなければならない
・すぐには効果が得られない |
・相手との境界線をうまく引かないと気がめいってしまう
・場合によっては命にかかわるため責任が重い ・信頼性のある資格は取得するハードルが高い |
学ぶならどっちがおすすめ?
どちらを学ぼうか迷っているという人は、まず目的を明確にしましょう。
現在の仕事のマネジメントに役立てたい、人間関係を円滑にしたい人はコーチング、自分や周りの人の深い悩みを解決したいという人はカウンセリングがおすすめです。
また、プロとして働くために学びたい人は「どのような働き方をしたいのか」、「どんな人をサポートしたいのか」を考えると迷いがなくなるかもしれません。
コーチは雇用されて働くことは稀ですので、ほとんどの人は個人事業主として働くことになります。
一方、カウンセラーは、個人事業主の人もいれば、医療機関やカウンセリングルームなどに就職する人もいます。(就職する場合は、公認心理士や臨床心理士など認知度の高い資格を取得した方が有利です。)
また、「どんな人をサポートしたいか」については、高い目標に向かって進みたい人を応援したいのならコーチング、心に深い問題を抱えている人の役に立ちたいならカウンセリングと考えるとよいでしょう。
コーチングやカウンセリングと混同されやすい言葉と違い
コーチングとカウンセリングの相違点をご理解いただけたと思います。
しかし、世間には似たような言葉が多く、わかりにくいと感じる方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、コーチングやカウンセリングと混同されやすい言葉についても触れておきます。
コーチング、カウンセリング、ティーチングの違い
コーチングとカウンセリングの違いはこれまでにもお伝えしてきましたが、もう一度整理し、「ティーチング」も並べて比べてみましょう。
・コーチング
コーチが相手との対話によって気付きを促し、「相手の中にある答え」を引き出して主体的に行動できるよう導きます。
教えることはしないため問題解決には時間がかかりますが、クライアントが自ら答えを出すので本質的な解決策を見出せます。常に双方向のコミュニケーションを図るため、関係性は対等です。
・カウンセリング
相手の悩みや苦しみの原因を紐解き、生き辛さが解消するよう支援します。一方的に指導することはなく、コミュニケーションは双方向ですが、必要な助言は行うため上下の関係性になります。
悩みが深刻なため、解決には時間がかかります。
・ティーチング
知識や経験豊富な人が、そうでない相手に有効なやり方や答えを教えることです。
先生と生徒、上司と部下などのように、上下の関係でコミュニケーションが一方通行になりがちですが、同時に多人数を対象に行うこともでき、速やかに問題解決できるので効率が良いのが特徴です。
コーチングと心理学の違い
コーチングは目標達成や人材育成の「手法」であり、心理学は人間心理や行動について研究する「学問」です。
双方は密接に関わってはいますが、並べて比べるようなものではありません。
しかし、インターネット上には「NLPコーチング」や、「コーチング心理学」のような類似する言葉が存在し、コーチングと心理学が混同してよくわからないという声が多いのも事実です。
「NLPコーチング」は、「脳と心の取扱説明書」とも呼ばれる心理学であるNLP(神経言語プログラミング)を、一般的なコーチングに取り入れたコミュニケーション手法です。
また、「コーチング心理学」は、コーチングの心理効果を研究する学問です。
コーチングとキャリアカウンセリングの違い
コーチングとキャリアカウンセリングは、扱うテーマと重視するポイントが異なります。
コーチングは、仕事、スポーツ、育児、恋愛など幅広い目標に対して支援を行います。比較的スパンの短い目標を定め「達成までのプロセスで本人が成長していくこと」を非常に重視します。
一方、キャリアカウンセリングは、キャリア形成における専門知識を用いて、その人らしい生き方を実現するための「働き方」に特化した支援を行うものです。
目標達成や成長というよりは、今までの経験をじっくりと聴くことで「その人にとって最適な未来を設計すること」を重視します。
コーチング、セラピー、カウンセリングの違い
コーチングは「自己実現や目標達成」、カウンセリングは「生き辛さの解消」のために行うもので、目的が違うということは十分ご理解いただけていると思います。
しかし、カウンセリングとセラピーが似ていて、違いがよくわからないという人もいるでしょう。
カウンセリングもセラピーも、薬や手術に頼らずに心身の不調の改善を目指す行為ですが大きな違いは、具体的な解決策を用いるかどうかにあります。
カウンセリングは、助言を行うことはあっても明確な解決策を提示することはありません。
一方、セラピーは速やかで確実な効果をもたらすために「色」「音楽」「動物」「香り」など具体的な手段を使い、積極的に心身に働きかけることで心身の不調を改善します。
まとめ: コーチングとカウンセリングの違いは、扱うテーマにある
最後にまとめると、コーチングもカウンセリングも「心」にアプローチし、その人らしい生き方へと導く点では同じですが、扱うテーマが「夢や目標」なのか「深刻な悩み」なのかというところに一番大きな違いがあると言えるでしょう。
どんな人でも理想があれば悩みもあるはずなので、どちらを学ぼうとあなたの人生にとって有益であることは間違いありません。
この記事が、あなたの新しい一歩のきっかけになれば幸いです。
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