コーチングの目標設定のやり方とは?【目標設定シート付】
「コーチングの仕事をしていて、なんだか目標設定がしづらいな」
「目標設定したけどお客様が動いてくれないな」
このように悩んでいませんか?
目標設定と一言でいっても、流れもやり方もわからず我流で行っているコーチの方もいらっしゃることでしょう。
こんな方のために誰でも使える目標設定シートを作りました。
このシートを使えば、簡単に目標設定ができるので、ダウンロードしてみてください。
今回の記事はその目標設定シートを使いこなすために、目標設定に関係するエッセンスをまとめました。
目次
コーチングでお客様の目標を設定する大前提
コーチングでお客様を本当に導けるコーチになるためには、表面的にセッション時に使う言葉のテクニックをなぞっていても意味がないことが多いです。
まず、こちらの質問を赤の他人に投げかける状況をイメージしてください。
「あなたは今後どうなりたいですか?」
反対に、あなたが赤の他人からこの質問を投げかけられても、「幸せになりたい」というような表面的な言葉しか返せない場合が多いでしょう。
ですから、コーチングのテクニックを表面的に知っても、お客様の行動の本質的な変化を起こす目標設定はできません。
お客様との信頼関係をまず作り、本当に望む目的を一緒に探すことからはじめるのがコーチングの第一歩です。
仮にこの部分がうまくいかなければ、リピートにつながりにくくなってしまいます。
では、どのようにすれば本質的な目標設定をできるのかについてお伝えしていきますね。
コーチングで目標設定するための具体的セッションステップ
それでは、コーチングで目標設定するための具体的なセッションの仕方をお伝えしていきます。
具体的なステップは以下のとおりです。
- 事務セッション
- 発見セッション
- 計画セッション
コーチによって、さまざまなセッションの進め方があるので、あなたがセッションに慣れてきたら、型は自由に決めても大丈夫です。
でも、初心者のうちは型を守るのも大事ですから、まずは以下の内容に沿って目標設定を行ってみてください。
なお、コーチングセッション全体の流れを知りたい場合には以下の記事がおすすめです。
事務セッションによる合意形成と信頼形成
コーチングセッションのステップ1つ目は、事務セッションによる合意形成と信頼形成です。
事務セッションでは、コーチングを行う上での契約内容をお客様と確認し、最終合意を取ります。
「ただの事務作業ではないの?」と疑問に思われるかもしれませんが、お客様はこのコーチを本当に信頼していいのか真剣に審査してきます。
ですから、事務セッションといえど、ミスがあれば継続や合意に至らないと覚えておいてください。
事務セッションでは細かいルールこそ信頼関係を作ると知る
事務セッションではお客様がコーチを真剣に審査しているとお伝えしました。
初対面の人と会話するときの状況に似ていますね。
しかも、お客様は報酬を支払う前提で会話するので、いろいろな疑問がでてきます。
たとえば、以下のような質問です。
- セッションの報酬はいつまでに支払うのか
- 返金対応を謳っているならどのように返金してもらうのか
- コーチングでどう変わっていけるのか
これらの質問は、コーチ自身が明確な根拠を持って話せないとお客様に不信感を与えてしまいます。
もちろん、あまりにも質問が多い場合は全てに答える必要はありません。
しかし最低限、契約に関する事項と実績の提示はすぐにできるようにしておきましょう。
この場でコーチがどんな対応をしてくれるのかは、セッションにおける雰囲気も左右します。
きめ細やかな対応をしてくれるコーチであれば、今後のコーチングも丁寧に対応してくれるだろうとお客様は感じられるはずです。
ですから、事務手続きのセッションといえども、コーチングと同様にお客様の表情や雰囲気を読み取り、丁寧な対応を心がけましょう。
発見セッションでお客様の人生を解析する
事務セッションで契約の合意やお客様との信頼関係が築けたら、発見セッションでお客様の人生を解析します。
人生を解析するとは、お客様が現在どのような状況で、今後どうなっていきたいのかを深く知ることを指します。
ここでは、今までの人生における価値観や目的、信念や信条などさまざまな概念を取り扱います。
つまり、人生におけるさまざまなことをお客様から聞き出すのが発見セッションです。
そのため、ポジティブな事項からネガティブな事項まであらゆる言葉に耳を傾けてください。
お客様の生き方や価値観を知るための質問例
ただ、いきなり「あなたの人生を聞かせてください」といっても、お客様は何を話せばいいのかわからなくなってしまいます。
ですから、コーチ自らお客様の目標を知るための質問していきましょう。
この質問は単純で力強いものが最適です。
- あなたは人生の何を変えたいですか?
- 失敗したときにどのように考えますか?
- 人生の壁をどのように乗り越えてきましたか?
これらの質問をすると、お客様の価値観や普段の行動が徐々にわかってきます。
すると、どのようなコーチングが効果的なのかその方針も浮き彫りになってくるでしょう。
ある程度お客様の考え方がわかったら、引き続き次のような質問してみましょう。
「あなたが行き詰まった時、コーチである私にどのような対応をしてほしいですか?」
引用元:『コーチング・バイブル第4版』ヘンリー・キムジーハウス他著、 東洋経済新報社
すると、お客様がどんな目的をもってコーチングのセッションに来ているのかがわかりますし、お客様はコーチと協力することで何を得られるのかがわかります。
コーチングにおける明確なメリットが提示されれば、お客様は進んでコーチングに必要な情報をコーチに伝えてくれるでしょう。
計画セッションで具体的な行動計画を作成する
ここまでのセッションでコーチとお客様は信頼関係を結び、さらにコーチはお客様の価値観や生き方も知れましたね。
ここからはいよいよ計画セッションで具体的な行動計画を作成します。
計画セッションでは、お客様がコーチングを受けようと思った動機にフォーカスします。
この動機からお客様が人生をどのように変えたいのかであったり、解決すべき課題は何なのかであったりとさまざまな事柄を導き出します。
いろいろな課題が出てきますが、コーチングの成果を出すために注力するべき課題を1個か2個に絞っていきましょう。
その課題を解決するための目標設定をお客様とコーチが一緒に考え実行していくと、コーチングの価値をはじめてお客様に提供できるようになりますよ。
目標設定シートを作成するときに投げかける質問
ここまで土台ができれば、目標設定はほとんど完成したといえるでしょう。
しかし、お客様が目標を達成するためには、目標設定シートを作成し行動に移さなければなりません。
その目標設定シートを作成するときには、「いつまでに、何をするのか」を明確にする質問を投げかけましょう。
「いつまでに何が起きればいいのですか?」
「どうすればそれが達成されたと言えるのでしょう?」
引用元:『コーチング・バイブル第4版』ヘンリー・キムジーハウス他著、 東洋経済新報社
このような質問を繰り返し、お客様主導で目標を決めていきます。
すると、お客様自身が決めた目標なので、納得感を持って行動に移せるわけです。
コーチングの目標設定のときに使う質問
前述の通り、目標設定のための計画セッションでは、コーチからお客様にいくつも質問してお客様の課題や願望を引き出していく必要があります。
ここからは、その際に有効な質問内容をより詳しく解説していきます。
これらを参考に目標設定することで、お客様の行動の本質的な変化を引き起こし、成果を出しやすくなるでしょう。
より細かく質問例を知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
広げる質問でブレインストーミングする
目標設定するときには、まずお客様が達成・解決したい事項をあげてもらいます。
このときには、広げる質問で目的をブレインストーミングするとよいでしょう。
- 今から3年後、どのようになりたいですか?
- あなたの夢が必ず叶うとしたら、何を叶えたいと思いますか?
- あなたの使えるお金に制限がなければ、何をしたいですか?
このようにお客様がYesかNo以外で答える質問をオープンクエスチョンといいます。
目標設定のオープンクエスチョンをするときは、実現可能かどうかの制約を外して考えるといいですよ。
あくまでブレインストーミングなので、なるべく多くのやりたいこと、解決したいことを出してもらいましょう。
これらはコーチングの方向性を決めるものなので、より詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
絞る質問でコーチングの目的を絞る
オープンクエスチョンでブレインストーミングしたあとは、たくさん出てきた目的の中から1個か2個に絞っていきます。
そのときに使う質問は以下のとおりです。
- とくに叶えたいと思う目的はどれですか?
- 一番はじめに取り組むべき問題はどれですか?
- 取り組むのが一番簡単そうなものはどれですか?
とはいっても、すぐに絞り込めないお客様のほうが多いので、アイゼンハワーマトリクスを使って目的を絞り込むのも、テクニックの1つです。
アイゼンハワーマトリクスを使う目的の絞り方
アイゼンハワーマトリクスとは自己分析のためのツールで、ここに書き出したもののうち、緊急度が低く、重要度が高い問題から取り組んでいきます。
その理由は、緊急度が高く重要度が高い問題は、お客様自身が解決する確率が高いからです。
たとえば、お金を貯めるためにコーチングを依頼してきた20代のお客様を想定してみましょう。
この20代のお客様は、貯金ができる体質になりたいと考えています。
もしこのお客様が借金を10万円ほど抱えており、すぐに返さなければ利子が高くついてしまう場合は、重要度が高く緊急度も高い問題として捉えられるでしょう。
一方、老後資金2千万円問題はどうでしょうか。
この20代のお客様にとって老後はまだ先ですが、安心した老後を過ごすためには重要です。
つまり、重要度が高く緊急度が低い問題ですね。
この問題は重要なのに、忙しい毎日から忘れてしまうことが多く、年齢とともに緊急度も徐々に上がってきます。
ですから、コーチングではこのような問題にフォーカスして取り組むことで、これから出てくるであろう問題を解決し、感謝されるようになるのです。
※もちろん、他の箇所でもお客様にとって優先度が高ければ対応します。
目的を目標化する質問を使って計画を立てる
さて、ここまでで取り組むべき目的を絞り込めたら、ぼんやりした目的を目標化していかなければなりません。
先ほど、老後2千万円問題という目的を事例として取り上げました。
この目的を達成するために、より具体化した目標を定めていきます。
そのときの質問は以下のとおりです。
- いつまでに2千万円を貯めたいですか?
- 具体的に何をしますか?
- それはどのくらいの量ですか?
- どういうきっかけでするのですか?
- どこでしますか?
- 誰のためにしたいのですか?
このときの質問は5W1H型の質問で、お客様がどのように行動していけばいいのかを気づいてもらいます。
ただし、ここで「なぜ?」や「どうして?」と詰問してしまうと、お客様が萎縮したり言い訳したりすることがあるので、できるだけ使わないでくださいね。
数値目標を立てるときのコツ
具体的な行動目標ができたら、次は数値目標を立てていきます。
数値目標のポイントは、達成できる目標を立てることです。
なぜなら、無理な目標はお客様のやる気を削いでしまうからです。
たとえば、貯金に苦手意識のあるお客様に、いきなり「5万円を貯金しましょう」といっても、達成が難しいことがほとんどです。
そこで、「まずは1,000円からはじめてみましょう」といい、スモールステップで徐々に目標を高めていけばいいだけです。
ですから、数値目標を立てるなら、まずは小さな一歩からを意識してくださいね。
コーチングの目標設定でうまくいかない原因
ここまでコーチングの目標設定の方法を詳しく解説してきましたが、目標設定の仕方がわかってもうまくいかないときもあるでしょう。
そんなときは、次のようなコーチングをしていないかを確認してください。
- お客様自身の変化が目標となっていない
- 信頼関係が築けていない
- お客様に寄り添うのではなくアドバイスしてしまっている
それでは、もう少し詳しく解説していきます。
お客様自身の変化が目標となっていない
まず絶対にやってはいけない目標設定は、お客様自身の変化や行動が目標となっていないものです。
他人を変えるのを目標にしてしまうと、望む変化がなかなか引き出せずに、お客様が疲れてしまう可能性が高いです。
たとえば、お子さんとの関係を改善するために、お客様ではなくお子さんの行動を変えることを目的としたとしましょう。
すると、お子さんへのコーチングを同時にしない限り、お客様自身がお子さんの行動を変えるのは難しい場合が多いですよね。
ですから、目標設定ではお客様自身の行動の本質的な変化を起こすために、何をするのかということからはじめていきましょう。
信頼関係が築けていない
冒頭でもお伝えしましたが、コーチングがうまくいかない理由の1つに信頼関係が築けていないことがあげられます。
コーチングは目標設定したあと、お客様の進捗状況を確認しながら管理する側面があります。
もし、ここで「コーチに従っていても結果が出ないだろう」とお客様が考えていたらどうでしょうか。
きっと、設定した目標も意味がないと考え、行動を起こしてくれることはないでしょう。
ですから、コーチを信頼して行動するという関係性をまずは作っておきましょう。
お客様に寄り添うのではなくアドバイスしてしまっている
お客様が自ら行動しなければお客様の行動の本質的な変化は起こりませんが、コーチ自らが全ての問題を解決しようとアドバイスしている場合、コーチングがうまくいかないことがあります。
もちろん、コーチングしている最中にお客様がアドバイスを求めてきたら答えてあげるのがいいコーチです。
しかし、全ての問題をアドバイスするコンサルタントになってしまうと、お客様が自走できないばかりか、コーチの負担も増えてしまいます。
ですから、必要に応じてアドバイスはしても、全ての問題に対してアドバイスするのは避けましょう。
コーチングの目標設定シートを使って流れを体験しよう!
今回、目標設定までのセッションで必要な項目をまとめたシートを用意しました。
これを使えば各セッションのステップが簡単に整理できますので、この流れに沿って自分なりのツールやトークスクリプトを準備すれば、継続につながる目標設定セッションの流れができます。
エクセルデータをこちらからダウンロードいただくと、「事務セッション」、「発見セッション」、「計画セッション」それぞれで必要な内容を書き込めるようになっています。
とくに計画セッションでは、3つのツールを作成しました。
- アイゼンハワーマトリクス
- 達成記録シート
- 月間目標管理シート
これらの使い方を具体例を交えながら解説します。
アイゼンハワーマトリクスを目標設定に使う
アイゼンハワーマトリクスは目的をブレインストーミングしたあとに、分類するのに役立ちます。
お客様から出てきた目的の中でもコーチングすべきものは、重要度が高く緊急度が低いものです。
ただ、お客様によって優先度は異なるので、相談しながら取り組むべき目的を1個か2個に絞っていきましょう。
達成記録シートで目標の達成予定日を確認する
達成記録シートは達成したい目標を決めたあと、期限を決めるのに役立ちます。
たとえば、月々1万円の貯金すると決めた場合、その目標の達成予定日を書き込みます。
その達成予定日に向けて何をしていくのかを次の月間目標管理シートで考えていきますよ。
月間目標管理シートで数値目標の設定まで行う
月間目標管理シートは、達成記録シートをより細かく分析する際に利用します。
先ほどの達成記録シートで定めた目標に対して、どんな手段を使っていくのかを設定します。
また、数値目標も記入できるので行動過程の見える化に役立ちます。
たとえば、画像にもあるように月々1万円の貯金を目指すのであれば、はじめに1,000円の貯金をしたり、固定費を削減したりするなどさまざまな手段が考えられます。
その数値目標をきちんと定めて期限も設定しましょう。
最後にお客様と話しながら、今月の目標達成ができているかどうかを評価の項目で数値評価します。
もちろん、このシートはカスタマイズが可能なので、あなたなりに評価の仕方も変えても大丈夫です。
このように目標設定が苦手だと感じるコーチでも、セッションの流れとツールを使いこなせばすぐに目標設定ができるので、ぜひ使ってみてください。
こちらから目標設定シートはダウンロードできます。